救うことが幸せに繋がるとは限らない:私が大好きな小説家を殺すまで /斜線堂有紀【読書記録】

ライトノベル
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感想書くためにこの小説のことを考えてたら凹んできました。

私が大好きな小説家を殺すまで (メディアワークス文庫)

斜線堂 有紀 KADOKAWA 2018年10月25日頃
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著者について

著者は斜線堂有紀。

大学在学中に投稿した『キネマ探偵カレイドミステリー』で第23回電撃小説大賞の「メディアワークス文庫賞」を受賞してデビュー。

今回紹介する『私が大好きな小説家を殺すまで』はデビューしてから2作目の作品のようです。

この本の後書きに『ドイツ語の課題を手伝ってくれたTさんに格別の感謝』と書いてあるんで、出版当時はまだ大学生だったんでしょうね。

このブログでは一度、同じ作者の『恋に至る病』という作品を紹介したことあります。

www.camduki.com

最後の最後で作品全体の価値観が揺るがされる良い作品でしたよ。

 

あらすじ

なぜ少女は最愛の先生を殺さなければならなかったのか?

突如失踪した人気小説家・遥川悠真。その背景には、彼が今まで誰にも明かさなかった少女の存在があった。
遥川悠真の小説を愛する少女・幕居梓は、偶然彼に命を救われたことから奇妙な共生関係を結ぶことになる。しかし、遥川が小説を書けなくなったことで事態は一変する。梓は遥川を救う為に彼のゴーストライターになることを決意するが――。才能を失った天才小説家と彼を救いたかった少女、そして迎える衝撃のラスト! なぜ梓は最愛の小説家を殺さなければならなかったのか?

 

Amazonより引用

 

感想

『憧れの相手が見る影もなく落ちぶれてしまったのを見て、「頼むから死んでくれ」と 思うのが敬愛で「それでも生きてくれ」と願うのが執着だと思っていた。だから私は、遥川悠真に死んで欲しかった』

斜線堂 有紀. 私が大好きな小説家を殺すまで (メディアワークス文庫) (Kindle の位置No.5-8). 株式会社KADOKAWA. Kindle 版.

『私が大好きな小説家を殺すまで』は、こんな激エモい一文から始まる小説です。

人気小説家・遥川悠真と、遥川悠真の小説を愛する少女・幕居梓の共生生活は最初こそ何だか小さな子供が夢見る王子様とお姫様の関係のように甘ったるいものだったのが、ある瞬間から緩やかに、しかし確実に破滅へと向かっていきます。

この小説は幕居梓の書いた最後の私小説という体裁で書かれているわけですが、幕居梓は遥川悠真の文体でしか小説を書けないわけで、自分の文体で書かれた遺書を見た遥川悠真本人は何を思ったのだろうと考えるとなかなか末恐ろしい作品です。

全ては遥川悠真が人として弱かったせいと言ってしまえばそれまでなんですけれども、弱さを認めてしまうということは幕居梓の居場所を奪ってしまうことと同義で、認めてしまったところでハッピーエンドになりそうにもなくてどうしようもない。

どうしようもないけれども、遥川悠真が自分自身を演じたところで彼の心は壊れていく。そうなると、もはや最初に幕居梓を助けるべきじゃなかったかもしれないという話になってくるんだけれども……。

想像力を使えば使うほど、怖くて面白い作品です。

 

 

 

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