【スト6】IBUSHIGIN所属 元プロアスリート cosaさんに訊く「格ゲーに辿り着いた理由」「元アスリートから見たスト6の良い部分」「緊張とパフォーマンスの関係」

ゲーミングインタビュー企画
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格ゲーマーへのインタビューシリーズの新作、大変お待たせいたしました。

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cosaさんの話

お給料をもらってた元プロスポーツ選手

カミヅキ
昔はcosaさんときゃっきゃ言いながらストVで対戦してた仲なのに、すっかりcosaさんはプロゲーマーって感じになりましたよね。
改めてスト6のプロライセンス、おめでとうございます。

cosa
ありがとうございます。
もう一生取れないだろうと思っていました笑

カミヅキ
僕、cosaさんと仲が良いからこそ、敢えて過去の話を深掘りしなかったみたいなところがあったんですけれども、格闘ゲームのプロになる前はプロのスピードスケート選手だったんですよね?

cosa
そうですね、お給料もらってたんで。
大学卒業して、次の日から6年間スケートのプロとしてやってました。
でも、2年前の12月31日の大会でスケートはやんなくなりましたね。

カミヅキ
引退?

cosa
どうですかね。
あんまり引退って言いたくなくて、スケートはまだやりたいなと思ってるんですけど――まあ、実質そういうことになるんでしょうね。
契約は切れたんでスケートのプロではもう無いです。

カミヅキ
格ゲーとスケートを並行してた時期はありました?

cosa
ありましたね。
でも大きなストVの大会と、いつものスケートの練習が被ったときは、スケートの練習を選ぶっていう日々でしたよ笑

老後の趣味探しで格闘ゲームに流れ着く

カミヅキ
ガチのスポーツ選手がどういう流れでストリートファイターをやり始めたんですか?

cosa
まず、スケートって肉体の衰えもあるし、生涯ずっと現役選手で最強を目指せるわけじゃないんですよね。
だから、他にも趣味やった方が人生楽しそうだなと思って色々探してたんですよ。
ベースを始めたりだとか、情報処理の勉強を始めたりだとか。

カミヅキ
りゅうせいくんとの対談動画、見ましたよ。超面白かったです。
スポーツ一辺倒だった自分にコンプレックスがあったっていう話でしたよね。

cosa
今さら22歳にも戻れないのに、社会から置いていかれてるなみたいな感覚がずっとありました。
自分の人生、どこに向かっていくんだろう――みたいな。

カミヅキ
焦りとかはやっぱ出ちゃいますよね。

cosa
で、老後の趣味探しの流れでスケートの合宿の最中にセールのストVを買ったのが始まりですね。

カミヅキ
元々ゲームは好きだったんですか?

cosa
異常なぐらい好きだったんじゃないですかね。

バイオ4をやりたくて、大きいPS2をスーツケースに入れて合宿に行ってたぐらいなんで。

カミヅキ
それだけゲームが好きだったなら、ストVもすぐに上達したんじゃないですか?

cosa
いやぁ、最初はランクマッチのストレスがやばくて大変でした。
大変すぎてゴールドぐらいのときに一度やめちゃってましたね。

カミヅキ
プロのスポーツ選手でもストリートファイターのランクマってきついんですね笑

cosa
ヤバいですよ。「ミンナツヨスギオレモウムリ……」みたいになってました。

カミヅキ
わかる~~~~~~~。

cosa
元々ゲームは好きだったんですよ。
けれども、ゲームの対戦でそんなにドキドキすることがなかったんですよ。
対戦中に汗とかも超出ちゃって笑

カミヅキ
ランクマッチって、友達との対戦と全然違いますよね。

cosa
ゲームとはいえ、自分を本気で殺しに来る相手と戦わなきゃいけないのヤバイじゃないですか。
やりはじめのときは、対戦どころじゃなかったですね。
自分のキャラが殴られてるの見るだけで心が痛かったりとか、画面を直視できないようなときもありましたし。
でも、「相手も勝ちたいし、しょうがないよね」って思ってから楽になりましたね。
今でももちろん怖いんですけど、この考え方で結構吹っ切れた部分があります。

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元プロスポーツ選手から見たスト6の良い部分

年齢のハンデが少ない!!

カミヅキ
元プロアスリートのcosaさんから見て、格闘ゲームの良い部分って何か思い浮かびますか?

cosa
年齢差だけで実力の開きが出ないのは格ゲーの良い部分ですよね。

カミヅキ
スケートだと年齢差だけで勝負が決まることがあったんですか?

cosa
スケートって体格とかパワーが結果に影響するスポーツなんで、小学生の中で一番速い子でも、中学生と一緒に競争したら絶対一番になれないんですよ。
僕が小学生のとき、自分なりに頑張ってるのに、どうしても大人にスケートで勝てなかったんですよ。それがすごいつまんなくて。
格ゲーも長くやっている人が強かったりすることはあるんですけれども、絶対に覆せないわけじゃないですよね。
だから、今格ゲーを大人に負けないレベルでやりこんでいる小学生とか高校生を見ると嬉しくなります。

カミヅキ
最近はスト6だと、プロと対等レベルに戦える若い子がどんどん出てきていますよね。

cosa
老若男女、体力差や年齢差も無しで、みんなが同じ目線で遊べる競技って凄いですよ。本当に。
年配の選手や、女性選手の活躍がもっともっと増えてくれると嬉しいですね。

カミヅキ
単純に、色んな人と同じツールで交流出来るのってワクワクしますよね笑
僕は身体にハンディキャップを抱えている人に寄り添ったモードがあるのも、結構スト6の良いところだと思っていて。

cosa
それもスト6推しポイント!
イベントで、音で相手の位置が分かるアクセシビリティモードっていうのを目隠しで遊ばせてもらったんですけど、まあ、超難しいんですよ笑
でも、それをやりこんでいる人がいて、ちょっと感動しました。
もちろんハードルはまだまだあると思うんです。けれども、これは本当に、圧倒的に、素晴らしいところです。

吹雪でも競技に参加出来る!!

cosa
あと、これはスト6だからかもしれないんですけれども、家にいながら世界と対戦できるのが最高ですね。
僕、北海道の更に東の果て出身なんですけど、「今日は吹雪がすごいので練習に行けません!外に出たら死にます!」ってスト6だと無いじゃないですか。

カミヅキ
無いですね笑

cosa
世界中どこを探しても、こんなスポーツって絶対ないんですよ。
今後、どんどん通信技術が上がっていくについれて、地方こそeスポーツをやるべきってなる可能性はあると思っています。

上達法について

課題の本質を見つける

カミヅキ
cosaさんってどうやって強くなったんですか?
ランクマで汗ぐっしょりになるぐらいプレッシャーに弱かったわけじゃないですか。

cosa
スケートでもそうなんですけれども、上達のためには課題の優先順位を付けて取り組むってのが結構大事だと思ってて。
小課題から取り組んでしまうと、うまくいかなかったりするんですけど、大課題を見つけられると小課題を3つ全部消化出来るんですよ。

カミヅキ
分かるような分からないような。
ストリートファイターだと大課題と小課題って何になるんですか?

cosa
たとえば、僕が初心者のときに気付いたのは「ジャンプ攻撃でちゃんと相手に触るぞ」とか、「対空を頑張る」みたいなのは小課題なんです。
その前に実は「自キャラじゃなくて相手キャラを見て動かす」っていう大課題があって、それを出来るようになって、「ジャンプ攻撃を当てる」、「対空も出る」、「弾も喰らわない」という課題が消化出来る、みたいな。

カミヅキ
あー、なるほど。
確かに相手キャラをちゃんと見て動かせないとジャンプ攻撃は届かないですね笑

cosa
目の前の「ジャンプ攻撃を当てる」って課題も大事なんですけど、むしろ取り組まなきゃいけないのは「相手キャラを見て動かす」の方で。

カミヅキ
確かにそこの順番を間違えて練習していたら大変だ。
でも、ピンポイントで大課題を見つけるって難しいですよね。

cosa
そうですね。
原因を突き止めても、それに取り組むのが難しいとかもあるし。
ただ、練習が本質とずれると伸び悩むんですよね。
ここは全スケート選手が大きく頷いてくれてると思うんですけど笑

カミヅキ
格ゲーマーの人も大きく頷いてるかと思います笑

cosa
あと、当時はアングリーバードが是空で優勝したときに、アングリーバードがやってて、自分の是空がやってないことをノートに書き出して、優先順位を決めて番号を振っていってました。

 

これはやりたいけど、多分今の自分にはできないし、ポイントが上がるきっかけにならなそうだから、後回しにする、みたいな。
影響の大きさと、自分のレベルのバランスを考えて、一番効果が高そうなものにしてましたね。
当たり前みたいに思うかもしれませんけど、これが出来る人はなんだかんだ少ない気がします。

カミヅキ
僕もなんだかんだ出来ないですね。
課題が散らかりすぎてやる気がなくなって「面倒だからランクマする!!!!!」みたいになりがちです笑

強い人の配信をずっと見る

カミヅキ
インタビューするにあたって、cosaさんにストVを教えていたキヨさんにDMを送って、事前取材みたいな形でcosaさんについてお話を軽く伺ったんですけれども、「cosaさんはPDCAサイクルが早くて、誰にでも教えを請いにいく」て言ってたんですよね。
そこは自分ではどう思いますか?

cosa
スケートのときには、画期的なヒントを出してくれるような人がいなかったから余計に色々な人に話を聞くんでしょうね。意見をもらえること自体がありがたくて。
仮にアドバイスが間違ってるにしても、確実にそれは違うって消去出来ますし。
強い人の配信にもかじりついてました。

カミヅキ
上級者の配信ってヒントの宝庫ですよね。

cosa
格ゲー配信は質問したら、すぐ答えが返ってくるのが良いですよ。

カミヅキ
雲の上みたいな存在の人でも、配信で聞くと結構親切にしてくれたりとかありますよね。

cosa
特に、僕が見ていた人はみんな優しかったです。
ストVのときは、”やるおさん”っていう上級者の是空使いの配信をずっと見てました。
上級者の意見を聞くだけで、自分のやってることに自信が持てるようになって、安心して練習に取り組めるようになったりするんですよね。

カミヅキ
わかりますわかります。

cosa
スケートのときは何が正解か分からないまま、練習に取り組まないといけなかったんです。
しかも、大会の日がもう決まっていて、それまでに準備はしなきゃいけないから、立ち止まってはいけないんですよね。
たとえば、さっき言ったみたいに「ちゃんと優先順位を立てたあとに練習に取り組むぞ!」ってことをやってると、その間は練習できないですよね。だから動き続けないといけない。新しいヒントを出してくれるような人もいない中で、みんな悩みながら前に進んでいました。

カミヅキ
選手寿命もスケートの方が遥かに短いでしょうし、ボヤボヤしてられないわけですね。
特に、プロは頑張って結果を出さないと明日の生活にも直結しますし。

cosa
これ話がズレるんですけれども、僕、頑張っても結果って出ないものだと思ってて。

カミヅキ
なんか、意外なこと言いますね。
イメージに合わないというか。
アスリートの人って「頑張れば結果が出る!」って話が好きそうなイメージだったんですけれども。

cosa
むしろアスリートだったから、そう思うのかもしれません。
だって頑張って勝てるなら、全員勝ってますし……。

スピードスケートは緊張した方が勝てる、対戦ゲームはリラックスしないと勝てない

カミヅキ
格闘ゲームとスピードスケートで似ている部分はありますか?

cosa
自分を高めていけば相手に勝てるというのは、スケートと同じですね。
キザな言い方をすると、自分の作品を作り上げるみたいなのは、格ゲーもスケートも共通していると思います。
そういう意味では、スケートの選手は格闘ゲームに適性があると思います。
ただ、格闘ゲームってトレーニングメニューが決まってないじゃないですか。そこが難しいですね。

カミヅキ
そうですか?
対空の練習とか、コンボ練習とかは、ある程度は方法が決まってないですか?

cosa
いや、スポーツはもっと決まってるんですよ。
たとえば100キロスクワットを持てる人間が101キロ持てるようにするには、80キロ6回4セットをやりましょうとか、最大酸素摂取量を10上げたいから、こういう練習しましょうとか。
格ゲーで、対空練習を何分やりましょうとかないじゃないですか。

カミヅキ
あー。
スポーツ科学のように正しいプロセスで客観的に効果が証明されてるものはないですよね。

cosa
格ゲーに使う要素が無限にあるから定量化しにくいというのもあります。
心理戦要素もあるから。

カミヅキ
確かに。
対戦相手とのやりとりが大事ですもんね格ゲーって。

cosa
かずのこさんが言ってたんですけど、対戦中は相手が何考えてるかを考えなきゃいけないんですよ。そのために頭の余力を残しておかないといけないんですよね。
スケートは緊張とかプレッシャーがあった方が集中出来て結果も出たんですけれども、格ゲーは気合いが入りすぎると良くないって思います。

カミヅキ
格ゲーは適度なリラックスが大事?

cosa
恐らく……。
少なくとも、自分の中ではそうだと確信していますね。
シンガポールであったスト6のオフライン大会は緊張で、安易な選択肢を選んだせいで負けちゃったんですよ。
普段そんなやらないんですけれども、中足中迅雷とかやっちゃって。心の余裕がなくて、相手のやりたいことに思考が行かなかった印象がありますね。

「感謝で昇龍拳」はスト6でも最高の教科書

カミヅキ
他に、上達のために役立ったものとかあります?

cosa
宮本武蔵の五輪の書とか良いですよ。
僕もちゃんと読んでないんですけれども、ネットで調べた時に一部分だけ出てきて。やっぱし修行の話が良いんですよ。
「驚き恐れ疑い戸惑いの心に支配されるともうダメ」みたいなことが書いてるんですよね。

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カミヅキ
格ゲーはプレッシャーに吞まれたら死にますよね。
僕はメンタル弱いから特に呑まれやすいんですが笑

cosa
みんなそうっすよ笑

カミヅキ
「感謝で昇龍拳」も、紙版を買って読んでいると聞きましたけど、あれも役に立ってますか?

※感謝で昇竜拳
スト2の対人戦に重きを置いて書かれた個人発行の攻略本。
いつかお話を伺ってみたい……。

cosa
もうバチバチに活きてますね。
キヨさんに勧められてストVのときから読んでたんですけど、スト6になってからの方が自分のレベルが上がって、理解度も上がったような感覚がありますね。

カミヅキ
スト2にはラッシュもインパクトも無いですけど、役に立ってるんですか?

cosa
いや、ラッシュもインパクトも結局地上戦なんですよね。
言ってしまえばジャンプも地上戦だし。
最高の読み物ですね。あれは。

カミヅキ
じゃあ感謝で昇竜拳は、cosaさんのスト6に活きてますか?

cosa
ワールドウォーリアーの1戦目が釧路で呼ばれたイベントと重なっちゃって、大会前日に練習が出来なかったんですよね。
運営の人がかなり苦労してくれたおかげで、大会には出れたんですけれども。
そのときはホテルで「感謝で昇竜拳」を読んで、頭の中で地上戦してたらトップ8入りですよ。
カンショウパワーだなと思いましたね。

※ワールドウォーリアー
CAPCOM CUPの本戦出場権を賭けて行われた個人戦トーナメント。
cosaさんは2023年度初回の大会で5位の好成績を残した。

カミヅキ
それはすごいな笑
「感謝で昇竜拳」ってネットでも読めますよね?

cosa
個人的には紙の本の方がレイアウトが見やすくて、頭に入りやすくて気に入ってます。
内容もネットに全部載ってないんですよ。

カミヅキ
「感謝で昇竜拳」といえばプレイヤーの分類が面白いですよね。

cosa
僕は不惑心中型になりたいんです。
読みと心中するみたいな。外れたら勝手に死んだりもするんですけど。

カミヅキ
確かにcosaさんは、対戦ですごい大胆なことをやってきて殺しにきますよね。

cosa
ワールドウォーリアのときも、まだお互いに体力いっぱいあるのに「この起き攻めじゃんけん負けたら俺は死ぬ!!!!!!」って思いながらやってましたね笑
ちなみに、翔くんも昔からカンショウが好きですよ。

カミヅキ
JPにも活きてるのかな。

cosa
そうですね。
翔くんのJPは結構地上戦をするタイプなんで。

カミヅキ
僕も、カンショウはネットで読めるやつを1回か2回は通して読んだことはあるんですけれども、なかなか活かすのが難しくて笑

cosa
いやいや、足んないですよ笑
もっと読まないと!

今後の課題は「人間力」

カミヅキ
cosaさんの中で、課題だと思っていることって何かありますか?

cosa
自分が上手くいかないときに相手を認めるってことに関してはまだ難しいと思っていて。
人間力の向上は、スケートをやっていたときからの課題ですね。

カミヅキ
人間力ですか?

cosa
上手く説明するのが難しいんですけれども――ときどさんって人間力がすごく高いんですよ。
南アフリカでやってたRedBull Kumiteのときなんですけど、ときどさんは初戦で負けちゃったんですよね。でも、自分が負けたのに「お前が強かった」みたいなチョー気持ちいい顔してて
もうときどさんに惚れちゃいましたね。
あんなことできる人はなかなかいないですね。

カミヅキ
ちなみに、cosaさんもスケート選手だったときに人間力を試されるような瞬間ってありましたか。

cosa
いっぱいありましたよ笑
たとえば、スピードスケートだと、前の組で転倒があって氷の状態が悪くなると、タイムスケジュールが狂って、ウォーミングアップの計画が総崩れになるんです。
そうなったときに、何て言うんだろう――うまく表現が難しいんですけど、自分の出来ることにだけ力を注ぐのってすごく大事で。
人間って納得いかないものに対して、上手く受け入れることで、心が成長すると思うんですよね。

カミヅキ
わかるような気もします。

cosa
人は生きていく以上、理不尽な目に必ず遭うんです。
僕がスポーツをやっていて一番良かったことは、”自分が何とか出来る部分にだけ全力を注ぎ込める人間でありたい”という大きな課題を見つけられたことなんですよ。
僕、スヌーピーで出てきた「配られたカードで勝負するしかない」っていう言葉がまさにそれで好きなんです。
そういうのってやっぱ本気で競技の世界に浸かることで、養われていく部分だと思うんで――今後も格ゲーを通して、心の部分を強くしていくのが、自分のテーマですね。

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