ホログラムを登る男 / 平沢進 全曲の感想と歌詞の考察

平沢進
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『ホログラムを登る男』は平沢初心者にもオススメの良アルバム。平沢にハマったはいいけど何から購入すれば分からないという人はホログラム買っておけば間違いありません。 

ホログラムを登る男

ホログラムを登る男

 

 

www.youtube.com

こちらは公式の全曲ダイジェスト版。

 

 

1.アディオス – Adios

狂った祭囃子みたいな電子音のイントロから曲です。ヒラサワ本人が打ち込んだドビュッシーのピアノ曲を切り刻んでぐちゃぐちゃにして作ったそうです。何でそんなことを?

忙しない転調と馬鹿コーラス、間奏のギター、インチキファルセット、変だけど耳に残るフレーズ。どこをどう切り取ってもヒラサワの曲。

歌詞の方はというと、まず前提知識として『この世界は金儲けをたくらむ大いなる詐欺師が誤情報と恐怖をまき散らして形作られている』というのがヒラサワの一貫した世界観なんですよね。

ブルーリンボーの曲が多かったけれどもこの曲は誤情報と恐怖と不安で民衆を操作するディスとピアを描いたアルバム。17年前のアルバムだけれども、当時から今と同じ状況が見えただけ。

 

平沢進のBackSpacaPass「会然TREK2K20編」簡易まとめ – 格ゲーマーの読書記録とその他いろいろ

ヒラサワの歌詞を読み解く際はそれを頭に入れておくとわかりやすいです。

この曲は既存の価値観・権威にアディオスと軽やかに別れを告げる曲ですね。

真実を語る者は嘲笑され、時には消される。偽の歴史が配給され、記録される。大小さまざまな催し物は遥か昔から上演されてきた。そろそろ気付いてもいいはずだ、と思うのは甘い。TV、新聞、権威、恐怖、不安、常識が常に人々の脳を食い荒らしている。新たなお膳立てが準備されているように見える。次の壮大な催しものが上演されるのだろうか。それとも、人々の中に巨大なショックの記憶が残存するうちは、ただ不安を与えれば事足りるのか。私には分からない。

 

2007年9月 – Phantom Notes|平沢進 Susumu Hirasawa (P-MODEL) Official site


2.アヴァター・アローン – Avatar Alone

この曲に収録されているのはバカコーラスではなくてヨタ者コーラスだそうです。

アヴァター・アローンという存在についてヒラサワはライブのストーリーでこのように述べています。

 主体性が希薄で、周囲の影響を受けやすく、常に不安を抱えて右往左往しているその男は、過去向く士の後を追えば、安全な場所にたどり着けると信じ、ずっと過去向く士を追って来た。過去向く士は彼を「抜け殻」あるいは「アヴァター」と呼んでいる。

ストーリー|Susumu Hirasawa Interactive Live WORLD CELL 2015より

 

 

 3.異種を誇る「時」 – The Time being Proud of its Heterogeneity

何回も聞いてるはずなんですけれども、メロディが複雑なせいかいまいち曲を思い出せません。初めて聞いたときはこの曲でどっと疲れた記憶があります。

異種を誇る時、即ち『異質であることを誇る時代の到来』と言ったところでしょうか。

 

4.MURAMASA

クセが少なくて、えらく聞きやすい。「ここで耳を休めろ」というヒラサワ神の心遣いか。村正ってタイトルの割にはメロディに和の要素が無いのが気になる。 

キミを甘い言葉で誘惑する夢魔を切り裂き、キミの意志を妖艶に目覚めさせる。そんな歌詞ですかねー。


5.Wi-SiWi

わいさいわい。

暗くじめっとした電子音(テスラコイル?)のイントロから入って、変な震え方をするストリングスを経て、歌唱が始まります。

わいさいわいは漢字に直すと多分、歪幸いです。

『起きろ外道』『笑え邪道』という歌詞から、どこか正道扱いされていないことを喜んでるように見えます。何せ『影が来て祝う』(表だって誰も祝わない)ですし。だからきっと『歪幸い』もヒラサワの視点から見れば良いことなんです。


6.回路OFF回路ON – Circuit OFF Circuit ON

ヒラサワが低音ボイス(素の声?)でテンポの速い曲を歌ってるのは珍しいですね。

『デリバティブ』『ファンド』という金融用語が並んでいます。まあ、言わなくても分かると思うんですけどヒラサワは資本主義が嫌いです。というより、資本家の利益のために道理が曲げられることが気にいらないようです。

歌詞中のリスキーなゲームってのも資本主義のことでしょうね。


7.クオリア塔 – Qualia Tower 

『見よ幸いは岩のごとくあり』という歌詞が韻を踏んでいて面白い。ミヨサイワイワイワのゴトクアリ。

クオリアという言葉について調べたところ――

「クオリア」という言葉は、馴染みがないとかえってややこしく捉えがちだが、ちっとも難しい意味ではない。一言で言えば「感覚の質感」、もう少し言えば「我々のさまざまな感覚に伴うありありとした質感」ということになる。たとえば、赤いリンゴや青い空を見ているときの、あの赤い感じ、あの青い感じ。いかにもリンゴらしい赤そのもの、いかにも空らしい青そのものをクオリアと呼ぶ。

クオリアと意識の不思議について~茂木健一郎さん関連(迷宮旅行社)

とのことらしいです。人の主観に働きかける電波を出す塔がクオリア塔だと思う。多分。。。


8.火事場のサリー – Sally at the Fire

言われてみりゃこの曲馬鹿ギターなんですよね。ギター部分はてっきり打ち込みだと思ってたんですけど。

カタストロフに到達すると逢えるという『火事場のサリー』氏ですが、このアルバムの世界観は「世界は全て資本主義が見せたホログラムに覆われている。だからこそホログラムに騙されないように人は正しく情報を取捨選択して真実に到達しないといけない」みたいな感じなので、カタストロフというのもきっと資本主義か何かが作り出した幻覚のカタストロフなんですよね。

バリアを壊すでなく『愛』と描くだけで留めているのは、障害も見方を変えれば愛になる、ぐらいの意味なのかな。


9.ホログラムを登る男 – The Man Climbing the Hologram

 公式サイトで無料配布が行われている曲です。

susumuhirasawa.com

ストーリー性のある力強い歌詞とメロディーで強固な世界観を表現しながらも、リスナーのイメージを強く制限するわけでもない。むしろ聞く人によって幾数もの解釈を許す可塑性を持ち合わせた名曲です。さながらイメージ上にしか存在しない新世界への入場チケット。

WORLD CELL2015ではホログラムは人為的に作られた悪しき仮想現実として表現されています。

世界は人工的なPhaseで覆われ、現実はホログラムによって作られた仮想現実によって隠されていた。そこは、不安や制限、人間の相対化、不足や不可能性で満たされており、二項対立によって分断されていた。危険な気運はそれらを糧に成長していた。

ストーリー|Susumu Hirasawa Interactive Live WORLD CELL 2015

『一切は牢で生まれた夢 荒れ狂う嵐絵』という歌詞がホログラムの正体を表現しています。本物の嵐ではなく、嵐絵ですからね。ホログラムを信じたまま生きればHEAVENですが、それは死よりなお悪辣な幻覚のHEAVENです。

今までの価値観を処刑の如く捨て去ってホログラムを登りきったとき、見える光景は何なのかは最後まで分かりません。


10.鉄切り歌(鉄山を登る男) – The Iron Cutting Song (The Man Climbing an Iron Mountain) 

飛び道具のように飛んでくるヒラサワの間抜け声で、前曲で緊張した心が一気に緩まるのを感じます。近年のヒラサワアルバムではお馴染みの最後のリラックス曲。

実はこの曲、鉄を切る方法が前半と後半で違います。

前半は『肉の腕と カロリーで』という歌詞があるようにパワーで鉄を削ってるんですが、後半は『思い出す力で』鉄を切ってるんですよ。

ヒラサワは人間には忘れられた才能が眠っているという主張をツイッターでよくしているので『思い出す力で』というのは、それのことなんでしょうね。

 

 

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回=回の考察もやってます。

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20/10/5追記。Gipnozaもあります

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