カミヅキ記録帳

読書、映画、ゲーム、平沢進、ALI PROJECT、雑記。

【読書】「努力は才能に勝る」はただの神話?サイコパスは遺伝する?"言ってはいけない"不愉快な真実(言ってはいけない―残酷すぎる真実― / 橘玲)

ジャンプ的価値観の敗北……

 

言ってはいけない―残酷すぎる真実―(新潮新書)

 

 

 

【目次】

 

概要

この社会にはきれいごとがあふれている。人間は誰しも平等で、努力すれば必ず報われ、〝見た目″はそれほど大した問題ではない――だが、それらは絵空事である。往々にして、努力は遺伝に勝てない。知能や学歴、年収、犯罪癖も例外ではなく、美人とブスの「美貌格差」は生涯で約3600万円もある。また、子育ての苦労や英才教育の多くは徒労に終わる……。進化論、遺伝学、脳科学の最新知見から、人気作家が次々と明かす「残酷すぎる真実」。読者諸氏、遺伝、見た目、教育、性に関する、口には出せない「不愉快な現実」を今こそ直視せよ!

 

Amazonより引用

 

”言ってはいけない”不都合な遺伝の真実

「教授の息子は流石頭がいいね!」とか「アーティストの息子だからお父さんの才能を継いで歌が上手い」というのは日常でもよく聞く言葉だし、何気なく僕らも同じことを言いますよね。しかし一方で「馬鹿の息子はやっぱり頭が悪いよね」とか「お父さんが音痴なら息子も音痴だな」というのは"言ってはいけない"こととされています。

同じことを逆にして言っただけなのに反発を覚えるのは僕らの中で無意識に「努力は遺伝に勝る」という神話が根付いているからです。この本は「努力は遺伝に勝る」「人は見た目に左右されず平等である」という僕らが何となく信じていた平等論が科学的にどこまで正しいかを検証した本です。先にこの本の結論を言ってしまうと、努力してもそう簡単に負の遺伝は覆りませんし、男女問わず見た目が悪いと年収も下がります。

 

犯罪者の子供は犯罪者になりやすい

「親から負の遺伝(歌が下手とか、頭が悪いとか)は受け継がれない。受け継がれたとしても後天的な努力で覆すことが出来る」という少年ジャンプ的な美しい価値観を我々は信じていますけれども、この本によるとそれは幻想なのだそうです。

それどころか「犯罪者を親に持った子供は、犯罪者になる可能性が高い」という事実がこの本では示唆されています。もちろん無根拠ではなく、本の中ではいくつもの科学的な根拠が提示されています。「犯罪は環境が生み出す」というのが我々の中の定説であったわけですが、実は犯罪者になるかどうかは生まれながらに決まっているというわけです。

環境が人格を決定しないという事例をひとつ挙げると、日本で少し前に、兄弟の中でひとりだけその家庭に似つかわしくないレベルで粗野な弟がいると思ったら実はDNA鑑定の結果、病院で取り違えられていたことが判明したという事件があったようです。遺伝の影響というのは想像以上に大きく、親の育て方ぐらいじゃ性格はどうにもならないそうで。
「生まれながらに犯罪者になる可能性が決定されている」という考え方を受け入れたとしても、誰も幸せにならないと一見思うわけですが、本の中では「犯罪者は環境が生み出す」という考え方が招いた悲劇として、殺人犯の親が大きなバッシングを受けて自殺してしまった例が紹介されています。

 

綺麗事を尊ぶ世間への嫌がらせ

他にも「美貌格差」や「黒人のIQタブー」、「IQと年収の相関性」など、面白いテーマが並んでいるんですけれども、この本を読み終わっても本当に元気が無くなるだけで終わるのが難点。というのも、この本が全体的に「都合の悪い科学的事実を言ってやろう!」というだけで終わってしまっているんですよね。

あとがきにも「綺麗事を言う新聞社に腹が立ったことが、この本を作るきっかけになった」と書いてあって、「綺麗事を言う世間への嫌がらせ」以上の本では無いように見えました。
あとは、本としてのインパクトを持たせたいがために論理展開が強引になってしまっている部分が一部あって、そのせいでこの本全体の信ぴょう性が少し落ちてしまっているのが惜しいなと。

筆者の主張は科学的な裏付けが取ってあるものが多いので、まったく全てが出鱈目ということはありえないと思うのですが、自分に都合のいい論文だけを引用している可能性もあるので、そこまで鵜呑みにもせず、中庸的な態度で捉えておくのが安全なんじゃないでしょうか。

 

 

 

)