概要
雪深き森で、燦然と輝く、硝子の塔。
地上11階、地下1階、唯一無二の美しく巨大な尖塔だ。
ミステリを愛する大富豪の呼びかけで、刑事、霊能力者、小説家、料理人など、一癖も二癖もあるゲストたちが招かれた。
この館で次々と惨劇が起こる。
館の主人が毒殺され、ダイニングでは火事が起き血塗れの遺体が。
さらに、血文字で記された十三年前の事件……。
謎を追うのは名探偵・碧月夜と医師・一条遊馬。
散りばめられた伏線、読者への挑戦状、
圧倒的リーダビリティ、そして、驚愕のラスト。
著者初の本格ミステリ長編、大本命!Amazonより引用
気付いたら半日で読み終わっていた
ミステリとしての出来が良いのはもちろんなんですけれども、この小説は先に読み進めさせるパワーが半端ないんですよ。
冒頭から「え、どうなるの……」という展開が続いて、気付いたら半日かけて読み終わってました。
「今この小説読み終わらないと明日の仕事に支障出ちゃう><」という感覚はAnother 2001以来です。
ミステリ=ラーメン論
これは個人的な意見なのですが、本格ミステリって作る労力と得られる評価が割に合ってないと思うんですよね。
というのも、本格ミステリってまず要件を満たすのが面倒くさいんですよ。
「魅力的な謎」と「謎を解決する合理的なトリック」と「素晴らしい名探偵」を必ず登場させて面白い小説を作ってくださいというのが、本格ミステリです。
でもそれって、縛りが強烈すぎて作れるものが決まってるんですよね。
これはラーメンの抱える問題と似ている気がします。
「ラーメン」というジャンルで料理を作る以上、もはや驚くべき味の食べ物なんて出てくるわけないんですよ。
あのラーメンよりちょっと脂っこいとか、ちょっと風味が豊かみたいなのはあるかもしれないけれども、ラーメンという要件を満たすことを考えると、全部「昔どこかで食べたことがあるラーメン」の亜種にしかならない。
本格ミステリというジャンルの抱える問題は、それと同じなんじゃないかと思います。
その中で、本作は令和に出す本格ミステリという縛りで作られた作品の中では最高峰じゃないのかと思うのです。
島田荘司がこの本に対して、「今後このフィールドから、これを超える作が現れることはないだろう」とコメントを残しているのですが、全くもってその通りでしょう。
今後、ミステリの遺伝子とも言うべきものは様々な形で受け継がれていくと思います。
しかし、「本格ミステリ」という伝統様式で大衆に評価されるものは、この本が最後になるんじゃないかという予感がします。
コメント