概要
高校2年生の“文学少女”陸秋槎は自作の推理小説をきっかけに、孤高の天才“数学少女”韓采蘆と出逢う。
彼女は作者の陸さえ予想だにしない真相を導き出して……“犯人当て”をめぐる論理の探求「連続体仮説」、数学史上最大の難問を小説化してしまう「フェルマー最後の事件」のほか、ふたりが出逢う様々な謎とともに新たな作中作が提示されていく全4篇の連作集。
華文青春本格ミステリの新たなる傑作!
Amazonより引用
中国にも百合文化はあった
中国からの翻訳ミステリー。
日本語と言語体系が近いのか、英語の翻訳物を読んでいるときにような文章の引っ掛かりがなくて驚きました。
もちろん、登場人物の名前は漢字だらけなんですけれども、思っていたほど「どの人物が誰かわっかんねーよ!」という状態にはならなかったです。
ミステリーとしては、トリックそのものよりも、そのトリックに隠されている事情にフォーカスしたタイプです。
古典部シリーズに近いと書けば、「あんな感じか」と分かってくれる人も多いかと思います。
しかもこの小説、バリッバリの百合。
百合作品なんて対ありでした。 ~お嬢さまは格闘ゲームなんてしない~ ぐらいしか読んだことがなかった自分でも分かるレベルで百合。
恐らく百合作品に最も求められるであろう、登場人物同士の繊細な関係性もバッチリです。中国にも百合文化が存在したのか……と驚きました。
ミステリーを数学のアナロジーで考える
内容は、作中作として掲載されている推理小説を、文学少女の陸秋槎と、数学少女の韓采蘆の二人で話し合いながら犯人当てを楽しむという感じ。
文学少女はミステリー読者の視点で犯人当ての解答を考え、一方の数学少女は数学者の視点で犯人当ての解答を考えます。
僕はお恥ずかしながら高校の模試で数学が7点だったぐらい数学が苦手だったんですけれども、本作の持つ「ミステリーを数学のアナロジーで考える」という特徴については十分に楽しむことが出来ました。
短編集になってるんですけれども、2作目の「フェルマーの最終定理」をモチーフにした事件は特に「なるほど!」と膝を打つような内容でした。
もっと読ませてほしいのに、何故そこで終わるのか
基本的には面白いんですけれども、欠点もいくつかあります。
まず、この作中作がいかにも「犯人当てクイズのために描いた小説」って感じで、ちょっと頭に入ってきにくいこと。
作品の性質上、通常のアプローチでは絶対に解決出来ないような事件しか登場しないので、そこまで事件の詳細を頭に入れる必要は無いのですが、それでも読んでてちょっとしんどいなあと思うことが多かったです。
次に、読後感があっさりしすぎていること。
登場人物の個性が強いので、もっとキャラクターの個性を活かした話が出てきてほしかったなと思います。
本編は、主人公と数学少女とルームメイトの三角関係が匂わされるところで終わってしまっていて、「え?ここで終わり???」となったんですよね。
作中で触れられた「得体の知れないオーディションで巻き起こった悲惨な事件」について、どこかで取り上げるのかと思ったら、何もなくお話が終わってしまったのもちょいマイナスポイント。
本編がそこそこ面白かったので、「もっと読ませてくれ」と思ってる矢先にハシゴを外されてしまった気分になりました。
続刊に期待ですねえ。
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