カミヅキ記録帳

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【読書感想】伊集院の理屈っぽさが好きなら是非(世間とズレちゃうのはしょうがない/伊集院光・養老孟司)

突然ですけれども伊集院光の魅力のひとつは感覚の説明が上手いことだと思うんですよね。

自分の中で一番印象的だったのはHEAVY RAIN(ヘビーレイン)っていうPS3のゲームについて「面倒なことをたくさんやっていく間に、いつの間にか催眠感が出てキャラクターと一体化してくる」という感想を言ってたことなんですけよね。あの面白さを説明しにくいゲームをそんな風に言語化するのかと!

そんな言語化のスペシャリストたる伊集院光が養老孟司と「生きづらさ」をテーマに対談するというのが今回の一冊です。

世間とズレちゃうのはしょうがない

 

 

 

【目次】

 

概要

世間からはじき出されないことを願う理論派・伊集院光と、最初から世間からはみ出している理論超越派・養老孟司。博覧強記でゲーム好きという共通点がある二人が、世間との折り合いのつけ方を探ります。
見た目が大きくて、子どものころから同級生との違いをひしひしと感じ、「世間からはじきだされることがこわかった」という伊集院さんは、不登校になった理由や落語の道に進んだわけを明かしつつ、「人間はそもそも群れの中で生きる動物。『他人に優しくなるほうが得』ということになるんじゃないかな」と語ります。
一方「自分ははじめから世間から外れていた」と語る養老さんは、「都市においては、意識で扱えないものは排除されます」という都市論・世間論を展開。さらに、たまには世間から外れて世の中をながめてもいいんじゃないか、と世間から抜け出す方法を提案します。
抱腹絶倒のトークから、世間とズレながら生きていくヒントが得られる一冊です。

 

Amazonより引用

 

養老孟司と伊集院光

伊集院光についてはラジオを聞いているからよく知ってるんですけれども、この本を買った時の僕は養老孟司については「バカの壁」を書いた人ってこと以外知らんッス!!という状態でした。

でも、本の冒頭に書いてある伊集院光との馴れ初めを読んでめっちゃ好きになりましたんですよね。

伊集院:僕が最初に先生に興味を持ったのは、僕が司会をやった、とあるテレビゲームのイベントなんです。先生はその選考委員長をなさっていたんですよね。

養老:日本ゲーム大賞。あれ、創設されたときから十年選考委員長をやらされた。

伊集院:「ゲームは勉強にもならないんだ、脳にも悪いんだ」と、まだ世間の向かい風がすごいときですよ。しかも養老先生の世代は「ゲームけしからん!」の方がほとんどでしょう。ところが、先生が理路整然と「ゲーム中毒と言うけれども、楽しいことは多かれ少なかれ中毒になるものですよ」と話された。 

そして「二宮金次郎は勉強中毒で、当時は役にも立たない勉強を夢中でやっているどうしようもない変わり者だと言われていた。そういうものですよ」と。自分より年上でこういう人がいるんだと驚いたし、ゲーム愛好者としては、すごく味方をしてもらった感じもしました。だから、おそらく世間の価値観とはちょっと違うところにいらっしゃる方なんだろうなとは思っていたんです。

調べると日本ゲーム大賞の創設が96年で最初の大賞が「サクラ大戦」なんですけれども、96年といえばゲーム差別が真っ盛りの時期ですよ。

お前いい歳してゲーム好きなの?(笑)と言われていた時代からゲーマーに対する理解をお持ちだったということで、それだけでこのジジィ信頼出来るなと。我ながらチョロいなあ。

 

ガラガラポン

養老:僕は小学生のときに、そのガラガラポンをやらされたから。 

 伊集院:え? それはどういう……。   

養老:終戦ですよ。それまでは「一億玉砕」「本土決戦」といわれていたのが、戦争が終わったらとたんに「ポン」となくなってしまって、「平和憲法」「マッカーサー万歳」の世の中になってしまった。   

伊集院:僕、そのことを前から思っていたんです。自分の親たちの世代にちょっと敵わないなと思うのは、彼らが戦争を経験しているからなんです。親父がいつも言っていたのは、生徒が校庭にある銅像か何かに一礼しないといきなりぶん殴っていた先生が、戦争が終わった途端、まったく関係のないことを言いだした。そのときのポカンというか恐怖というか、わけの分からない感じ。 

親父に「戦争が終わったとき、うれしかったの?」と聞いたら「うれしくなかったことはないんだけど、うれしいとかいう感情じゃなくて、もっとすごいことなんだ」と言うんです。そのとき言われたのは、「おまえ、今まで習ってきた教科書が全部ウソだと言われたらどう思う?」。   

養老:そうです。ウソだと言われる以上に、自分で墨をすって、教科書の戦争に関係あるところを全部黒く塗らされたわけだからね。みんなで声を揃えて何度も読んだところですよ。だから理屈じゃないんだよね。感覚ですよ。肉体感覚。

伊集院:そのガラガラポン体験が生きているから、先生には「何かしらそういうことは起こるよ」という覚悟があるんですね。

自分が今まで拠って生きていた「世間」とか「常識」というものが突然取り崩されて、これが新しい「世間」と「常識」ですよーと提供される気持ち悪さをこれ以上なく正確に表現した言葉だと思うんですよね。ガラガラポン。

「人が作ったものはいつか壊れる」とはよく言いますが、「世間」と「常識」ですら例外じゃないわけですね。いやはや強烈だなあ。

 

伊集院の理屈っぽさが好きなら是非

この本は結論だけを抜き出すと「ズレ=多様性!」みたいなよく聞くやつに落ち着くんですけれども、そこに至るまでの二人のやり取りが秀逸なんですよね。

伊集院の感じた疑問を、養老先生が返して、それをまた伊集院が分かりやすく咀嚼して……というのを繰り返す内容で、ラジオでたまに垣間見せる伊集院光の理屈っぽさが好きな人には特におすすめの一冊。

2時間ぐらいで読み終わりますが、読んでる最中に色々と考えさせられるので案外コスパが良い方の本なんじゃないかと思います。

 

はてなブログの今週のお題「読書の秋」

 

 

 

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