【読書感想】ゲームに勝てなくて悲しい?怒ってる?メンタルを安定させたい?よろしい、”無”を学びましょう(無(最高の状態)/鈴木裕)

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ゲームで勝てなくて苦しいときにこれ以上負けても失うものは無いと変な開き直りを見せるか、俺はいつか上手くなるだろうと妙にキラキラポジティブに振り切ることはよくある話。しかし、今回紹介する本によるとその態度は良い結果を生み出さないようです。

ではどうするか?「凹む」とか「怒る」という感情が自己そのものでは無く、脳の一機能であることを自覚して、「あー、脳がなんか言ってらあ」と通り過ぎるのを待つ――すなわち無になることが良い方法であるとのこと。

この本で書かれていることは大きく分けて

①悔しがっている自分、怒っている自分というのは、脳の一機能に振り回されているだけ
②太古の昔から存在する脳機能に逆らうことはとても難しいが、「無」を目指すことでダメージを最小限に抑える方法は存在する

の2つです。

とりあえず脳機能についてある程度知っておくだけでも、ゲームに負けた悔しさは緩和するかもしれません。

無(最高の状態)

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概要

 この本で言う ”最高の状態”とは、あなたが生まれながらに持つ判断力や共感力、好奇心といった能力を存分に発揮できるようになった姿を意味します。私たちの目を曇らせる不安や思い込みが取り除かれた結果、意思決定力と他者への寛容さが上がり、いまネガティブな人は気持ちが安定し、ポジティブな人はさらに幸福度と判断力が高まる。そんな状態です。

なにやら眉唾物のようですが、かく言う筆者も幼いころから人生の辛さと格闘してきた人間のひとりであり、本書で取り上げる対策から多大な恩恵を受けてきました。

十数年ほど前から本書の技術を実践し続けたところ、興味深い変化が起きました。ある時からふと仕事や人づきあいのプレッシャーを覚えなくなり、いつも「失敗をしたらどうすべきか」を考えていたのが、「現状をより良くするにはどうすべきか」へ思考の方向がシフト。いつも浅い呼吸しかできないような感覚を抱いていたのが、少しずつ深く息を吸える感覚が生まれ、いまではかつてない落ち着きを得ています。

無論、私が持つ根っこの気弱さが変わったわけではなく、いまも内面に様々な負の感情と思考が渦を巻くことがしばしばです。その点ではまだ筆者も見習い坊主ながら、かつてとは「苦しみ」との付き合い方が変わったのは間違いありません。

Amazonより引用

【悲報】我々は幸せになるように作られていない

不幸になるために生きている人はいないと思うのですが、科学的な研究によると「現代人が目指す幸せ」と「脳機能が目指す幸せ」は一致していないことが明らかになっています。

というのも、現在我々が使っている脳の機能はほとんどが原始時代に適応するために生み出されたものなんですけれども、その機能を平和になった今の時代でも流用してるからおかしなことになるんですよね。

たとえば「何でもネガティブに考えてしまう」という考え方の癖を持つ人は、現代ではメンヘラと呼ばれますが、狩猟生活が主だった原始時代ではこの機能が無いとライオンに襲われるポイントにうっかり足を踏み入れて死んでしまう可能性が高かったわけです。

他にも、「怒り」も「嫉妬」も現代では面倒くさいものですが、古代で生き残るために必要なシステムだったと言われています。このような数万年前からインストールされている本能に対して、場当たり的な対策で逆らうことはなかなか難しいわけです。

これを本書ではビーチボールのメタファーで説明しています。

空気でふくらませたビーチボールを持って、プールに入ったところを想像してください。自分の思考や感情に真正面から立ち向かうのは、このビーチボールを水の中に沈めようとするようなものです。力を込めるほどボールは水面に浮かび上がろうと力を増すでしょう。そんな無意味なことをするよりは、ビーチボールはそのままにしておき、水や太陽の感覚を楽しむほうが有意義なはずです。

水に浮かぶビーチボールを鎮めようとしてもキリが無い。そんな意味のない抵抗をするよりも、もっと有意義なことをやろうという話ですね。

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痛みはこじらせるから苦しくなる

とはいえ、本書で伝えたいことは「怒るな!」や「動じるな!」というような話ではありません。

「怒ること」は仕方ないけれども、それを引きずって必要以上にダメージを貰うのはやめましょうという内容の本です。これを本の中では仏教の説話になぞらえて、「一の矢」「二の矢」という単語で説明しています。

「ゲームで負けたことに対して(一の矢)、自分は能力が低いのかと落ち込み(二の矢)、このままずっと勝てないのではないかという考えがグルグルする(三の矢)

一の矢で10ダメージを受けることは仕方ないとして、続く二の矢、三の矢が刺さることで、本来なら10ダメージで済む苦しみが二の矢で30ダメージ、三の矢で200ダメージと増えていくことが問題なのです。

そこで本書が推奨するのが、「自己」を消失させること。つまり無になることです。

この本によると「自己」とは、ただの脳機能の集合体です。記憶や感情、知識による経験、自分の内面のモニタリング機能などを分別せずに全部いっしょくたにまとめて我々は「自己」と呼んでいるに過ぎません。

これらは自分の上位概念などではなく、手や口と同じようなただのパーツであり、パーツであるならば機能をオフにすることも出来るわけです。(いささか乱暴な説明ではありますが、詳しいことは本を読んでほしい)

停止、観察を徹底して自己を制する

そのための方法として「停止」「観察」という二種類の対策が本の中で挙げられています。

「停止」は脳で発生する二の矢、三の矢の物語の発生を別の作業で止めてしまうこと。

「観察」は「停止」によって弱まった二の矢、三の矢が生み出した物語を、自分ごとでは無く「現象」としてメタ的にじっくりと観察することで、自己から切り離す作業です。

本を買う意味が無くなるため詳しくは触れませんが、いずれも宗教的な物ではなく、多くの科学的な研究によって効果が実証されているものです。

冒頭の繰り返しではありますが、改めてここまでをまとめると、

①悔しがっている自分、怒っている自分というのは、脳の一機能に振り回されているだけ

②太古の昔から存在する脳機能に逆らうことはとても難しいが、「無」を目指すことでダメージを最小限に抑える方法は存在する

ということになります。

「無」を目指すと書くと胡散臭く見えるかもしれませんが、十分な科学的エビデンスに基づいて書かれている本なので、効果の程はそれなりにお墨付きです。

ゲームへの一喜一憂が止まらないという人だけでなく、日常でイライラがとめどなく溢れている人にはなかなか良い本じゃないでしょうか。


 

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