「安っぽいラノベ」と取るか、「スピード感のある極上エンタメ小説」と取るか(ぼぎわんが、来る 比嘉姉妹シリーズ /澤村伊智)

小説
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日本ホラー小説大賞受賞作です。

巻末の解説によると、この賞はクオリティがイマイチな作品しか送られてこないと「今年は大賞無し」で終わってしまう硬派な賞らしいのですが、審査員全員(貴志祐介・宮部みゆき・綾辻行人の3人)に絶賛され満場一致で受賞することとなったのが、この『ぼぎわんが、来る』なんだそうです。

来る』という名前で実写映画化も果たしていますが、原作と映画では後半の展開が大きく違います。

 

ぼぎわんが、来る 比嘉姉妹シリーズ (角川ホラー文庫)

 

ぼぎわんが、来る 比嘉姉妹シリーズ (角川ホラー文庫)

 

 

 

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あらすじ

幸せな新婚生活を営んでいた田原秀樹の会社に、とある来訪者があった。取り次いだ後輩の伝言に戦慄する。それは生誕を目前にした娘・知紗の名前であった。正体不明の噛み傷を負った後輩は、入院先で憔悴してゆく。

その後も秀樹の周囲に不審な電話やメールが届く。一連の怪異は、亡き祖父が恐れていた“ぼぎわん”という化け物の仕業なのだろうか? 愛する家族を守るため秀樹は伝手をたどり、比嘉真琴という女性霊媒師に出会う。真琴は田原家に通いはじめるが、迫り来る存在が極めて凶暴なものだと知る。はたして“ぼぎわん”の魔の手から、逃れることはできるのか……。怪談・都市伝説・民俗学――さまざまな要素を孕んだ空前絶後のノンストップ・ホラー!!

 

Amazonより引用

 

 

 

信じていたものがぐらぁと揺らぐ第2章

この小説は章が変わるごとに視点人物も変わります。

1章ではまともに見えた人物も、視点人物が変わり、考え方や出来事の捉え方が変わると、途端に異常者にしか見えなくなってしまうのが面白いところ。

2章に入ってすぐに、とある人物の印象が一変してしまうあの感じ。信じていた物がぐらぁっと来る感覚は一度読むと忘れられません。ああいうのを””身の毛もよだつ””と言うのでしょうか。

 

読者を現実世界に戻す第3章

1~2章は真っ当なホラーとして書かれているのですが、最終章にあたる3章は物語を〆るためにやや強引な展開を持ち込んでいます。

ここが本作で一番評価の別れるポイントで、「ラノベっぽい」と批判されたり、「痛快である」と評価されたりする場所です。僕は「痛快派」です。

仮に3章の展開をやらずに2章で終わってしまうとホラーとしての完成度は高くなるんですけれども、読者が虚構世界から帰ってこれなくなるんですよね。

敢えて解決しないことでホラーとしての完成度を高めて読者にダメージを与える方向性で行ったのが、小野不由美の「残穢(ざんえ)」やネット上の都市伝説「きさらぎ駅」なんですけれども。

僕は3章の展開は割と好みです。

 

安っぽい、あるいはスピード感がある文章

文章は読みやすいですが、ちょっと好みが別れるんじゃないでしょうか。

必要最低限で済まされている描写を「安っぽい」と捉えるか、「スピード感がある」と捉えるかは読者の読書遍歴によって変わりそうです。

僕はちょっと安っぽいなとは思いましたが、あまり多くを描写しているわけでもないのに読んでいて映像が浮かんでくるので、文章の上手い人が意図的に肉抜きしてるような気もします。

 

映画版「来る」は何故ああなったのか

そしてこれは映画版の軽いネタバレなのですが、映画版ではそのラノベっぽさを拡大解釈したのか、全国から選りすぐりの霊能者を数十人単位で呼び寄せてそれはもう壮大な儀式を行うというとんでもない展開になるのですが(※これぐらいのネタバレであの映画はつまらなくならないから是非見てほしい)、恐らくあれは原作のラノベっぽさに違和感を感じないように、突っ込む気が失せるレベルの超展開にした結果なのだと思います。

まるで燃えてる建物に水をぶっかけるんじゃなくて、周辺に核爆弾を落として違和感を無くすかのようなやり方ですが。

 

この本の解説の質が高くて、ほぼ解説に書いてあることと同じことの繰り返しになってしまいましたが、面白さが伝わったなら幸いです。

ちょっと人は選ぶところはありますが、エンタメとしてなかなか質が高い1冊ではないでしょうか。

僕は、久しぶりにゲームの時間を削ってまで読んでしまいました。

 

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プロフィール

読書好きのゲーマー。
ゲームは無双みたいなライトな物が好き。
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