久しぶりの長編です。
『消失以降』に起こったキャラクターの内面的な変化をリセットせずに、それを物語に組み込んでいて、とても面白かったです。
特にハルヒの人間的な成長っぷりにはちょっと感動しました。
あらすじ
年末から気にしていた懸案イベントも無事こなし、残りわずかな高一生活をのんびりと楽しめるかと思いきや、ハルヒがやけにおとなしいのが気に入らない。
こんなときには必ず何かが起こる予感のそのままに、俺の前に現れたのは8日後の未来から来たという朝比奈さんだった。しかも、事情を全く知らない彼女をこの時間に送り出したのは、なんと俺だというのだ。未来の俺よ、いったい何を企んでいるんだ!?
大人気シリーズ怒涛の第7弾!
Amazonより引用
『憂鬱』『消失』に続く大きなターニングポイント
物語というのは、誰かの問題を解決するというのが大原則なんですよね。
元々『涼宮ハルヒの憂鬱』はシリーズ化を想定していなかった作品なので、1巻の『憂鬱』の時点で中心人物であるハルヒの問題は全部解決してるんですよ。
だから2巻の『溜息』(映画作りの話)は明らかに無理のある作り方をしていて、物語を成立させるために1巻の出来事をほとんど無かったことにした挙句、ハルヒの知能指数を小学生レベルにまで落としてるんですよ。すごいつまらなかったです。
そこから3巻『退屈』はお茶を濁すような短編集。
4巻の『消失』は大傑作なんですけれども、語り部であったキョンの問題を解決してまったせいで、もう本当にやること無くなってるんですよね。
それを証明するかのように5巻『暴走』、6巻『動揺』は消失以前の時間軸を描いた短編集でした。
そして7巻目の『陰謀』でようやく正面きって、消失以後の時間軸が描かれたわけなんですけれども、『溜息』のときみたいに誰かの知能指数を下げるのかと思っていたら、ちゃんと続編を書いていて面白かったです。
SOS団は利害関係を超えた居場所になった
今回はみくるを中心とした話なんですけれども、物語的なテーマはSOS団の変化と絆の描写です。
そもそもSOS団って団長のハルヒ以外は損得勘定だけで集まっていただけなんですよね。キョンは断るのが面倒だからハルヒに付き合ってただけで、長門、古泉、みくるの三人はそれぞれが所属している組織の意向でSOS団に参加してただけなんですよ。
それが消失までの事件を経て、いつのまにか利害関係を超えた友情によってSOS団は集まるようになっていたことが今回の話ではっきりと分かります。
各キャラの成長に感動
今までと違って、積極的に事件に関わる熱血キャラになったキョンや、「何も知らない無自覚なマスコット」を脱却しようとするみくるが見れるんですけれども、一番の見どころは自分の意志を持つようになった長門有希ですよ。
これがもうほんっと可愛い。特にキョンに隠し事をするときの「秘密」っていうセリフが、活字越しでも可愛い。
あと、ハルヒが日常を楽しんでるシーンにちょっと感動して泣きそうになりました。本当にただのクソ女でしかなかった『溜息』時代と比べて成長したなあって……
物語的にも新たなライバルキャラが登場して、続きを早く読みたくなる1冊です。
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