カミヅキ記録帳

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『『風立ちぬ』を語る~宮崎駿とスタジオジブリ、その軌跡と未来~』 という本の感想を書いた記事

一時期にそこかしこで粗製濫造されていた”謎本 ”の類ではないです。どこが違うの?と言われたら説明が難しいんですけれども。

 

風立ちぬ [DVD]

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オタキングという愛称で知られている(…のか?)岡田斗司夫による『風立ちぬ』の考察本です。この映画を見て何故か分からないけれども感動したって人は多いと思うのですが、筆者に言わせればこの映画は我々が思っているほど綺麗な映画じゃないそうです。

この映画は、「恋なんかしない朴念仁が、ついに恋をした」という見方をされることが多いようですが、そうではありません。二郎には「女の子に よく見られたい」という自意識が人並以上にあるのに、ど近眼というコンプレックス のせいでそれを表に出せない人間 です。

岡田 斗司夫 FREEex. 『風立ちぬ』を語る~宮崎駿スタジオジブリ、その軌跡と未来~ (光文社新書) (Kindle の位置No.148-151). . Kindle 版.

もう一度映画を見ることがあれば注意して観察してほしいのですが、どんなシチュエーションであっても、自分の視界や画面内にかわいくて綺麗な 女の子が出てきたら、二郎は必ずそちらをチラッと見やります。そういう 細かな演技を、宮崎駿監督は要所要所できちんと入れています。

岡田 斗司夫 FREEex. 『風立ちぬ』を語る~宮崎駿スタジオジブリ、その軌跡と未来~ (光文社新書) (Kindle の位置No.145-147). . Kindle 版.

アニメは実写ドラマ等と比べると『製作者の意図しない情報』が紛れ込みにくいメディアなので、質の良い小説を読むときのように暗喩やメタファーを読み取るのがとても楽しいと思うんですよね。だから、こんな風に作中の細かい情報からアニメを深読みすることが出来ると。筆者が元々アニメの制作側に立っていた人間なので 、こういうこと考えるの好きみたいなんですよね。

こういうオタクっぽい楽しみ方って聞いてるだけですごく楽しくなりませんか?私は楽しくなります。 

 

この本の考察は、作中情報だけで作品を考察するパートと、宮崎駿人間性や来歴、また、当時のスタジオジブリの状態や人間関係のようなメタ情報も含めて風立ちぬを考察するパートの二つで構成されています。

さっき引用した部分は『作中情報だけ』パートなんですけれども、筆者に言わせると「これ自体は誰にでも出来る」と。むしろ真骨頂はメタ情報込みの考察の方であると。それは筆者がアニメ業界にいた頃の宮崎駿ジブリの印象やインタビュー記事の情報から推測した、いわば妄想に近いのですが、確かに読んでてめちゃくちゃ面白い。

ゲド戦記 [DVD]

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 「何だこれは。こいつは『ゲド戦記』をまったくわかってませんね」「竜とアレンが 正面で向かい合っている構図を選ぶ時点で、こいつは何よりゲドがわかっていない」

まるで山岡士郎を責める海原雄山のように、「ついに馬脚を露わしたな。お前が何もわかっていない証拠だ!」とばかりに、ものすごい勢いでけなしまくります。

岡田 斗司夫 FREEex. 『風立ちぬ』を語る~宮崎駿スタジオジブリ、その軌跡と未来~ (光文社新書) (Kindle の位置No.857-861). . Kindle 版.

 これは宮崎駿ゲド戦記の原作者に「息子の宮崎吾郎がアニメ版の監督を行うことになった」と伝えに行ったときに、何故か自分が如何に息子よりゲド戦記を理解しているかをアピールしはじめて原作者を困惑させるというキチガイエピソードなのです。

宮崎駿がどれだけ人間として破綻していて、どれだけ創作に熱意を持っているかということがふんだんに語られていて、それがどこまで作品制作に影響したのかということが本の中で説明されています。

途中で筆者が書いてて楽しくなったのか、宮崎駿エピソードを映画の考察とは関係なく披露する場になってしまってるのがアレなんですけれども。

 

たとえばポプテピピックのパロディの元ネタ情報とかだったらツイッターでめっちゃ流れてくるんですよ。一方で真面目な作品の真面目な考察っていうのを目にする機会があまり無いわけですね。

私はそういうわけのわからない深読みが大好きなので、こういう本が出てきてくれることはすごく喜んでいます。

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