カミヅキ記録帳

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【読書感想】創作活動はコスパが悪い!テーマを決めて、痛覚を麻痺させろ!(アニメの教科書: 岡田斗司夫の『遺言』より/岡田斗司夫)

「”創作におけるテーマとは何か”について語る」という前フリから始まる本でありながらも、岡田斗司夫がDAICON~ガイナックス時代を思い返して語る自著伝という属性も併せ持っているので、話はあっちこっちに飛びまくっています。

しかも厄介なことに、脱線した話ほどめちゃくちゃ面白いんですよね。

逆シャアのメカデザインのコンペに、庵野秀明が精巧に模写した初代ガンダムまんまのイラストを送ったら「こいつは何が言いたいんだ」と富野由悠季が泣きながら怒った話とか、宮崎駿が岡田斗司夫に会うなり共産党に投票を勧めた話とか、韓国に発注したナディアのセルにキムチが入っててしかも袋が破れて汁がこぼれてた話とか。

10年前に読んだときは、こういう話が山ほど入っている裏話集として楽しんでいたんですけれども、今回は本の趣旨に従って「テーマとは何か」という部分を要約しておこうと思います。

 

結論を書くと、テーマは作り手にこそ必要なものなのだそうです。

その理由は

①創作活動が趣味としても、仕事としてもコスパが最悪だから

②バラバラのシーンに統一感を持たせるために必要だから

の2つです。

アニメの教科書 上巻: 岡田斗司夫の『遺言』より

 

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【目次】

 

概要

岡田斗司夫とガイナックスは、いかにして数々の傑作を生みだしてきたのか? 各作品の舞台裏からテーマ、さらにはクリエイター論まで、すべてを詰め込んだ一冊。

「創作論」にして、「作品論」にして、「ビジネス書」にして、「歴史書」にして、「オタク論」にして、「伝説のエピソード集」にして、「思想書」にして、「心に火をつける本」にして、「雑学本」にして、「物語」にして、著者の集大成です。書いておきたいこと、書く価値があること、全部入ってます。だから、『遺言』です。――「たぶん、これまでの僕の本で一番面白い」(「はじめに」より)

Amazonより引用

 

創作活動はコスパが悪い!テーマで自分を麻痺させろ!

たとえば、あなたが「こんなYoutubeの動画を作りたい」という素敵なアイディアを思いついたとしましょう。

思いついた瞬間は「ああ、なんて自分は天才なんだ」と浮かれた気持ちになりますよね。

しかし、そのモチベーションはまず翌日になれば下がります。

そこを乗り越えても、具体的な作業に取り掛かるとソフトの操作がややこしくて萎えてしまうこともあるでしょう。

こんな風にやる気が失せていってしまうのは動画作成でなくても、誰もが経験したことがあるんじゃないかと思います。

そこで必要なのがテーマなのです。

「こんなメッセージを世間に伝えたい」「もっと世界はこうなるべきだ」「俺ならあいつを超えられる」という作品に込める想いがあってこそ、はじめて面倒な作業が乗り越えられるわけです。

 

複数の人間が関わるほどテーマは重要になってくる

Youtubeの動画作成の例だとまだテーマは必要ないかもしれません。

しかし、岡田斗司夫が行っていたアニメ製作は集団作業になります。

当然、アニメ制作への情熱はスタッフによってバラバラです。誰もが監督と同じだけやる気があるわけじゃないですよね。

そこで監督やプロデューサーが「この作品でこんな風に世界を変えたい」とテーマを明示することが必要なのです。

要するに、テーマとはスタッフの士気を上げるためのお題目なんです。内輪に向けたものなので、当然、普通の観客にテーマの内容は伝わりません。

でも、それで良いと岡田斗司夫は言います。

何故なら、テーマが良ければ「本気度」は上がり、その本気度が妥協のない作品作りの姿勢を生み出すからです。結果として「テーマ」の持つ迫力だけは観客に伝わります。

(妥協のない作品がプロとして許されるかどうかは置いといて)

 

かつて存在した岡田斗司夫のオンラインサロンには「全世界の苦痛の0.03%を軽減する」という活動目標がありました。

これはサロン内の人間のやる気を高めるための「テーマ」だったんでしょうね。

 

ガンダムは本気度が高い、トトロは本気度が低い

本気度の高い作品の例として、「紅の豚」「機動戦士ガンダム」「天元突破グレンラガン」が本の中で挙げられています。

いずれの作品も「こういうのが格好いい!」「こういうのが大人なんだ!」という主張が本気としか思えないというふわっとした根拠で本気度高い扱いされているのですが、まあ確かに言わんとしてることは分かります。

逆に本気度の薄い作品としては「カリオストロの城」「となりのトトロ」が挙げられています。

「宮崎駿という人間を考えると、どう考えてもトトロやルパンに人生の全てを乗っけてるとは思えない」と、またふわっとした根拠で本気度低い扱いされているのですが、これもまあ分かる気がします。

 

そして、この例からわかるように「本気度が低い=駄作」というわけではないのです。

ただ、岡田斗司夫はテーマをきちんと決めて全力を出し切る「本気度の高い作り方」しかやらなかったそうです。

 

バラバラのシーンを繋ぎ合わせるのがテーマだ

創作意欲のある人間なら、「自分がアニメを作るならこういうシーンを作ってみたい」とか考えたことがあると思うんですよね。

アマチュア時代の庵野秀明はDAICON(※大阪の大規模SFイベント)のオープニングアニメを作るときに「色んなSFメカが出てきて爆発があって、女の子が出てきて、ミサイルで爆発するようなものを作りたい」と岡田斗司夫に語ったそうです。

しかし、これだけだと15秒ぐらいの映像しか作れないそうです。

そこに思想が無いので、どのようにシーンを繋ぎ合わせればいいのかが分からないんですよね。

ストーリーや、演出の方向性を決める旗印としてテーマが必要なのだと言います。

DAICONのOPに掲げたテーマは以下のようなものだったそうです。

 

・上下関係やメンツにこだわるSF界隈の先輩たちへの怒り

・DAICON開催への不安

・自分たちの才能を周囲に認めさせたいというフラストレーション

 

では、庵野秀明の作りたい映像が、どのようにテーマと混ざって作品として結実したのか、具体例を見てみましょう。

youtu.be

・最初の飛行機はSF業界の流れ、チャンスが自分達のところに来たことを表している。水はチャンスの象徴。

・真面目にSF大会をやろうとしているのに、SF業界のゴロツキたちがイチャモンを付けてくる

・女の子は「水を守る」という責任感から自分でも思ってもいなかったぐらいのパワーを発揮する

・真面目にやってるのにあーだこーだ言われる。

・画面に溢れかえるSFキャラは、社会全体が敵だと思っていたことの表れ。保証人がいないことを理由に会場のレンタルを渋るおじさんだったり、ギャラの上乗せを言い出す音楽屋のような、それをビームサーベルでスパッと切る。

・歴史や伝統あるSFキャラを斬ることは、自分たちが旧来の体制を崩してでも、新しいことを行うという気概の表れ。

・水を目的地まで届けて、大根にかけると宇宙船になる。DAICONが成功する。

と、こんな風にテーマとやりたいことを合致させてアニメを形作っていったそうです。

 

本では他にも、王立宇宙軍、ナディア、トップをねらえ、プリンセスメーカーなど、岡田斗司夫が関わった作品を教科書としてテーマについて解説されています。

クリエイターだけでなく、ガイナックスアニメが好きな人間にとっても面白い本だと思うので、良ければ是非。

 

 

 

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