単純明快なストーリーのハリウッド系アクション映画は退屈で苦手なのですが、だからといってメッセージ性が強くて難解な芸術映画も決して好きではありません。三島由紀夫の同名小説を映画化した今作は間違いなく後者の”面倒くさい”映画です。
正直言って、解釈が難しくてグロったシーンもあるんですけれども、つまらない映画かと言われたらそうとも言い切れないんですよねー
ネトフリで見ました。
あらすじ
“当たらない”お天気キャスターの父・重一郎、野心溢れるフリーターの息子・一雄、美人すぎて周囲から浮いている女子大生の娘・暁子、心の空虚をもて余す主婦の母・伊余子。そんな大杉一家が、ある日突然、火星人、水星人、金星人、地球人として覚醒。“美しい星・地球”を救う使命を託される。
ひとたび目覚めた彼らは生き生きと奮闘を重ねるが、やがて世間を巻き込む騒動を引き起こし、それぞれに傷ついていく。なぜ、彼らは目覚めたのか。本当に、目覚めたのか——。そんな一家の前に一人の男が現れ、地球に救う価値などあるのかと問いかける。
Amazonより引用
リリィフランキーと橋本愛のキマり方は必見
三島由紀夫が唯一書いたSF小説、「美しい星」を現代風にリメイクした映画。原作では核問題が大きなテーマになっているそうなのですが、映画では現代に合わせて地球環境問題と家族の絆が大きなテーマになっています。
宇宙人として覚醒した家族は一歩引いた視点で見ることが出来る観客からするとタチの悪い目覚め方をした人で、彼らの真剣さとその目覚め方のタチの悪さのギャップが笑いを誘います。特に主人公を演じるリリィフランキーと、その娘役の橋本愛のキマりっぷりがヤバすぎるのでそこは必見。地球人のままマルチにハマる母親役の中島朋子も良かった。
ちょっとポップにアレンジされた平沢進の名曲”金星”
そもそもこの映画を見たきっかけは僕が敬愛する平沢進御大の名曲、金星がテーマソングとして使われているからなんですけれども、橋本愛が金星人に覚醒するきっかけのひとつとして金星が使われていてびっくりしました。えっ、平沢進の曲って橋本愛さんみたいな超メジャー級女優に聞かせていいんですか!?みたいな。てっきり劇中歌的な扱いだと思ってたんですけれども。
原曲の完コピでは無く、登場人物の持ち歌という設定なのでちょっとだけアレンジされています。原曲は御大の声色も相まって宇宙規模の切なさを感じさせる名曲なのに対して、アレンジ版の方がちょっとポップ風味で、ともすればラブソングにも聞こえる軽さになっています。この軽さは役者さんの曲への解釈が足りないのかと思ったんですけれども、話を最後まで見ると「確かにこういう歌い方にもなるか」という気持ちになりました。
「自分の庭に埋めたはずの種が知らない民家の窓辺で花咲いているのを目撃したような感じ」という平沢進のコメントはなかなか的を得ています。
多様性のある解釈が出来る映画が好きならまあ。
前半はシュールなコメディ調でだいぶ笑わせてもらったんですけれども、後半の「観客に解釈を強く委ねる系のシーン」の癖が強く、人によっては大絶賛してるんですけれども、僕はこの部分がまったくノれませんでした。
この映画の中心部である「地球温暖化問題」についても、登場人物とそれを見ている自分とで問題に対する熱量の差が違いすぎるところも入り込めなかった理由かなあと思います。
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