【読書感想 / 荒木飛呂彦の漫画術】漫画は4つの概念で出来ている。①キャラクター ②ストーリー ③世界観 ④テーマ

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人生の半分以上少年漫画を描いて生活してきたおっさんが、少年漫画の描き方に関する企業秘密を全て暴露するという本です。

通常であれば、荒木先生の身近にいる人間しか聞けないような創作の話を1000円もしないような新書にたっぷり込めてくれています。普通に慈善事業としか思えません。

内容も、漫画の道具の選び方、ネタの見つけ方のような初歩レベルの話から、ジャンプ漫画とは何ぞやという哲学まで、荒木先生が思いつく限り詰め込んであるように見えます。

月並みすぎる表現ですが、荒木先生が同じ内容でセミナーをやったら10万円ぐらい平気で取れるんじゃないですかね……

今回は、今後もブログを書く際に使えそうな、漫画の基本4大構造についてまとめておこうと思います。

 

 

 

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概要

全く人気が衰えることなく長期連載が続く『ジョジョの奇妙な冒険』の作者、荒木飛呂彦。

「漫画は最強の『総合芸術』」と言い切る彼が、これまで明かすことの無かった漫画の描き方、その秘密を、作品を題材にしながら披瀝する!

絵を描く際に必要な「美の黄金比」やキャラクター造型に必須の「身上調査書」、ヘミングウェイに学んだストーリー作りなど、具体的な方法論からその漫画術を明らかに!

本書は、現役の漫画家である著者が自らの手の内を明かす、最初で最後の本である。

 

Amazonより引用

 

 

基本四大構造を知ると他作品の分析に使える

漫画の基本四大構造とは荒木先生独自の概念です。

①キャラクター

②ストーリー

③世界観

④テーマ

あらゆるエンターテイメントをこの四大構造に分解することを癖付けておくと、面白さの分析をするときに役立ちます。

たとえば、『孤独のグルメ』を例に、「基本四大構造」がどうなっているのか、分析してみましょう。

『孤独のグルメ』は、井之頭五郎という主人公がどうご飯を食べるか、ということをひたすら描く漫画で、まず「B級グルメ」という世界観があり、井之頭五郎という際立ったキャラクターがいます。

ストーリーは一見ないようですが、実は食事が「戦い」ともとれるような雰囲気で、どういう料理が来るのかというサスペンスもあります。また、最初に前菜なり付き出しを食べて最後にデザートで締めるというように、食べること自体がストーリーの基本である「起承転結」にもなっているのです。

井之頭五郎には「ひとりで食事を楽しむ」という一貫した哲学があり、これがこの漫画のテーマでもあります。「恋愛に行くのかな」と思わせておいて、けっしてそちらには行かず食事に行く。五郎にとっては、恋愛をおいても、お腹が空いたことの方が重要なのですが、実際、人間とはそういうものかもしれません。そして、お腹が空いたとき、人間は孤独なのです。その意味で、井之頭五郎という主人公には究極の人間像が描かれていると感じますし、『孤独のグルメ』は食事漫画の傑作だと言えるでしょう。

 

荒木飛呂彦の漫画術より引用

 

『キャラクター』は動機と欲求を中心に作る

「ジャンプで連載するにあたっては、とにかくキャラが全て!むしろキャラさえ強ければ他が弱くてもどうにかなる!」と荒木先生は主張します。

そしてキャラクターを作る際、特に大事な物は「動機・欲求」であると。

特に少年漫画だと、主人公の動機は正義や友情など、倫理的に好ましいものでないといけません。

確かに、ジョジョ各部の主人公は「母親のために戦う不良少年」や「情に厚いギャングスターを目指す」といった風に、徹底的に清く正しく作られてますね。

 

しかし、人間は正義に惹かれる一方で、内側に醜い欲望をも抱えています。

その開放を担うのが悪役キャラクターの役目です。

DIOに向けられた例の名言、「そこにシビれる!あこがれるゥ! 」は読者の声を荒木先生が代弁したものだったわけですね。

 

但し、キャラクターには時代によって劣化するという弱点があるので、ストーリーで補強しなければいけないそうです。

言われてみれば、波平みたいな頑固おやじって今は時代錯誤的ですからねえ。

 

『ストーリー』は常にプラスで終わることが鉄則

意外なことに荒木先生の中では重要度が低い項目。

キャラクターだけで漫画を作ることは出来るけれども、ストーリーだけでは漫画は作れないそうです。

仮に作りたいストーリーのためにキャラクターを用意したならば、そのキャラクターはストーリーの都合で動いてしまって、いわゆる「キャラクターが動かない」状態になります。

 

昔、自分で小説を描いていたことがあるんですけれども、基本的にストーリー重視だったんですよね。

確かに僕の小説は、ストーリーを表現したいあまり、没個性的な登場人物しか出てこなくて、自分が考えた以上の面白さにならなかったなあと思います。自分が考えた以下の面白さには平気でなるのですが……

 

更にジャンプ漫画であるならば、キャラクターがひたすらプラス方面に成長するストーリーを用意しないといけないと荒木先生は語ります。

トーナメント制なんかはその典型ですよね。主人公が必ず勝ってプラスの方向にストーリーが進みます。

ただ、これだと「優勝した後にどうするか問題」が付き纏います。

たとえば、優勝後にまたトーナメント形式をやろうとするなら、主人公はゼロの位置に戻さないといけません。「これはプラス方面に成長すべき」という原則に反するだけでなく、同じことをもう一度書くだけになるので作者的にも白けてしまいます。

そこで荒木先生が編み出したのが、スターダストクルセイダースの双六方式です。これだと「最弱の敵」のような面白い個性の敵をストーリー中に登場させることが出来て、話にバリエーションを持たせることが出来ます。

ちなみに1部でジョナサンが死んだのは、一見するとマイナスなんですけれども「血と魂を次の主人公が受け継いでプラスで終わるからオッケー」ということらしいです。

 

緻密なリアリティが『世界観』に繋がる

漫画家にとって一番大事なのはキャラクターなんですけれども、読者にとって一番大事なものは世界観なんだそうです。

読者の目的とは、究極的には「この世界観に浸りたい」というものだからです。

世界観とはリアリティであると荒木先生は語ります。

たとえば、スターウォーズであればデス・スターの内部を制作者がきちんと理解していることが大事なのです。もし、そこに嘘が混じっていることが読者にバレると、その読者は二度と漫画にのめり込んでくれません。

ジョジョ5部では最終決戦の舞台になったローマはかなり念入りにリサーチしたらしく、建物や信号はもちろんのこと、ジョルノ達に移動経路の距離感まで緻密に再現したそうです。

世界観の緻密さが面白さに繋がっている創作物というとシン・ゴジラ月姫を思い出す。

 

『テーマ』は迎合してはいけない

荒木先生はテーマを「作者の考え方。自分がどう生きるべきかという問題意識」と定義しています。

テーマが思いつかないからといって、なんとなく世間に迎合して、安易に売れそうなテーマを作品に込めると、モチベーションが続かないそうです。

この話は前に取り上げた岡田斗司夫の本の内容と一致しています。

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