劇場版が口コミで広がり、異例のロングランとなったことで有名ですが、今回取り上げるのは原作版です。
劇場版の『この世界の片隅に』は、悲しいシーンの後に当たり前のように日常シーンが流れて感情の整理が全く追いつかずに割と置いてきぼりにされてしまうという何かもう凄い映画だったんですけれども(そこがすごく良い)、原作版は更に読み手に解釈を委ねる文学的な要素が加わって厚みのある作品になっています。
今ならセール中で、キンドル版が全巻99円です。
あらすじ
大切なものを失くしても わたしはここで生きていく。
18歳で呉に嫁いだすずは、戦争が世の中の空気を変えていく中、ひとりの主婦として前を向いて生きていく。
そして、昭和20年の夏がやってきた――
戦時下の広島・呉に生きる、すずの日常と軌跡を描く物語。
Amazonより引用
天然ボケ主婦が過ごした戦時中の日常
この漫画、多重構造になってるんですよね。
まず、この作品は普通に読むと戦時中に生まれた一般主婦の日常を追いかけている漫画にしか見えません。これが多重構造の一層目です。
でも実は丁寧に情報を拾っていくと気付く裏設定があって(第二層)、そこから更に描写はされてるけれども明確な答えが存在しないので人によって意見が大きく別れてしまう描写(第三層)があります。
劇場版では、尺の都合で第一層だけにスポットを当てて作られていました。
注意深い人にだけ伝わる裏設定と、答えの無いメタファー
この漫画の第二層にあたるのは劇場版の『この世界の片隅に』ではカットされていた部分なんですけれども、後ほど公開された『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』だとそこの部分も省かず描かれています。
詳しくは書かないんですけれども、『この世界の片隅に』を見た人には是非この第二層も見てほしいです。
僕はそういう裏設定を拾うのが苦手で、読み終わった後にググって第二層の存在を知りました。
そして最後の第三層は、登場人物の心理やメタファーに関するものです。
ここは明確な答えが無いので、読者の判断に完全に委ねられている部分です。
この世界の片隅に : 上のAmazonレビューで長文を書いている人がいますが、第二層(作者が意図した裏設定)と第三層(自分にしか分からない解釈)をごっちゃにして全部真実のように書いているのであまり飲み込まれないようにしてほしいです。
僕は読み終わった後にググって色々な人の解釈を見るのをオススメします。
こういう多層構造がある作品は、読む度に何か発見があって面白いと思います。
劇場版を見た人も、そうで無い人も是非読んでみてください。
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