カミヅキ記録帳

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太宰治のツンデレ犬エッセイ:畜犬談 —伊馬鵜平君に与える—/太宰治【読書記録】

30分ぐらいで読める短編です。

畜犬談 —伊馬鵜平君に与える—

畜犬談 —伊馬鵜平君に与える—

畜犬談 —伊馬鵜平君に与える—

 

青空文庫なんで当然無料です。

キンドルが無い人は下のリンクから読めます。

www.aozora.gr.jp

 

 

著者について

言わずと知れた大文豪、太宰治です。

芥川賞が取れないことがコンプレックスで選考委員の川端康成に長さ4mのお手紙を送って賞を懇願したことがあるとか何とか。

 

あらすじ

甲府の仮住まいに住む「私」は、いつか必ず犬に噛まれると確信しているほどに犬を嫌っていた。

強い論調で犬の恐ろしさ・厭らしさを説く「私」であったが、いつしか一匹の汚らしい野良犬に付きまとわれることになる。

 

wikipediaより引用

感想

太宰治の作品は昔に『斜陽』を読んだぐらいで、後は『走れメロス』を教科書で読んだなーぐらいなもんです。

そんなわけでちょっと身構えて読み始めたんですけれども、めちゃくちゃ面白かったですね。

それも昔の純文学作家の名作を読んだとき特有のはえらいものを読んでしまった……的な気の重くなる面白さじゃなくて、普通に笑えて面白いです。

昔の文豪っぽい厳めしい文体で犬について罵詈雑言を尽くしているのがめちゃくちゃ笑えます。

こちらが何もせぬのに、突然わんといって噛みつくとはなんという無礼、狂暴の仕草しぐさであろう。いかに畜生といえども許しがたい。畜生ふびんのゆえをもって、人はこれを甘やかしているからいけないのだ。容赦ようしゃなく酷刑こっけいに処すべきである。昨秋、友人の遭難を聞いて、私の畜犬に対する日ごろの憎悪は、その極点に達した。青い焔ほのおが燃え上るほどの、思いつめたる憎悪である。

いかに畜生といえども許しがたい。

良いですね。一度は使ってみたい言葉です。 

 

たかだか日に一度や二度の残飯の投与にあずからんがために、友を売り、妻を離別し、おのれの身ひとつ、家の軒下に横たえ、忠義顔して、かつての友に吠え、兄弟、父母をも、けろりと忘却し、ただひたすらに飼主の顔色を伺い、阿諛追従(あゆついしょう)てんとして恥じず、ぶたれても、きゃんといい尻尾まいて閉口してみせて、家人を笑わせ、その精神の卑劣、醜怪、犬畜生とはよくもいった。

ここから太宰先生のアンチ犬トークは熱がこもり、最終的に雀と比較し始めます。

 

こちらは犬にビビりまくって媚びた結果、自己嫌悪に陥る太宰先生。

あわれな窮余の一策である。私は、とにかく、犬に出逢うと、満面に微笑を湛たたえて、いささかも害心のないことを示すことにした。夜は、その微笑が見えないかもしれないから、無邪気に童謡を口ずさみ、やさしい人間であることを知らせようと努めた。これらは、多少、効果があったような気がする。犬は私には、いまだ飛びかかってこない。けれどもあくまで油断は禁物である。犬の傍を通る時は、どんなに恐ろしくても、絶対に走ってはならぬ。にこにこ卑しい追従笑ついしょうわらいを浮べて、無心そうに首を振り、ゆっくり、ゆっくり、内心、背中に毛虫が十匹這はっているような窒息ちっそくせんばかりの悪寒にやられながらも、ゆっくりゆっくり通るのである。つくづく自身の卑屈がいやになる。

 

太宰先生のことは女を引っ掛けて心中したクズだと思っていたんですけれども、意外とユーモアの塊みたいな一面もあったんですね。

中盤からの口では犬が嫌いと言っておきながらも徐々に犬に愛着が湧いていく太宰先生も面白いので、是非読んでみてください。

 

 

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